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キスをして
第13章 律香の本懐
「ねぇ。真木ちゃんいいの?騙すみたいな真似して」

「良いんだよ。間宮さんは少し位我儘すべきだよ」

ママは真木の指示通り受け取った時計を真木に渡した。

「ごめん。巻き添えにしちゃって」

でも間宮さんはこうでもしないと前には進まない。
どうして好きなのに突き放して自分を苦しめていくんだろう。
フリーランスになって海外に仕事を出せるようになったなら日本から出られる筈なんだ。
通用していけるはずなのに。

『律は切っ掛けを作ってあげないとね』

只のノロケだと思っていた時はその意味が分からなかった。
でも今は分かる。
お節介でもいい。
嫌われたらなら仕方ない。
でも俺にとっては間宮さんは尊敬する先輩だから絶対報われて欲しい。

「でも俺、間宮さん大好きだから」

「真木ちゃん女もいけたの?」

「それは無理」



「あぁ──···腰痛い」

「ソファで寝たりするからですよ誠司さん」

「帰るの面倒だったんだから仕方ないだろ」

「女の前でもそんな感じなんですか?」

「·····いや」

「さっきリヴィさんがランチ持ってきてましたよ。摘まんできたらどうですか?」

「コレが終わったら行く」

目の前に広げられた新作デザインの時計をバラしながらルカに言葉を返す。

「···日本人って皆そんな感じなんですか?休みは休みましょうよ」

「ルカ。先に行ってろ」

分かっている。何を焦ってしているんだと思われているのは分かっている。
それを日本人だから、就任して余裕がないからだとか言われていることも知っている。
だけど3年の内に出来るだけの結果を出したい。
そうでなくては俺はここに来た意味が───
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