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キスをして
第13章 律香の本懐
「私のランチが食べられないのかしら?誠司」

「リヴィさん。後でちゃんと食べますよ」

「止めて」

無理矢理キャスターを回されてリヴィさんに向かわされる。

目付きが····怒った時のダヴィッドさんに似ている。
流石娘····

「私が怖いんでしょう。パパが言ってた」

「だったらなんですか」

「否定しなさいよ!進歩しない男ね!」

「はい」

「パパが亡くなってまだ2年よ。飛ばしすぎじゃない?皆貴方を信頼してるわ。皆貴方を愛してるわ。何をそんなに必死になってるの?」

「··············」

「はぁ~もう。何がそんなに怖いの!?日本で捨てられた彼女が怖いの!?」

「律はそんな子じゃない」

「誠司がそんな風に怒るの初めて見た」

「律が何かした訳じゃない!俺が勝手に···律が俺に付いて来ない事は分かってたんです。それに俺も彼女になんの心配も要らないと言い切れなかった」

「何?じゃあいつか迎えに行くつもり?自分が会えなくて辛いから仕事に逃げてるだけでしょ!?だったらなんで別れたりしたのよ!」

「彼女の努力を知っているから別れたんじゃないですか!」

「じゃあ遠距離したいって言って貰えない女の気持ちなんて微塵も考えなかったんでしょ!?帰る時間なんかない?何年も待たせたくない?仕事の邪魔にはなりたくない?電話一本も出来ないから?·····誠司。あなたはパパが育ててきた職人を信用してないの?あなたが尊敬してくれた私の父よ─────そんな時間位作ってあげられるわ?」

リヴィさんが俺の前にしゃがみこんで頬を包み込む。

「皆あなたを心配してるのよ?あなたに頼って貰えなくて寂しがってるわ···お願いよ。無理させる為にパパは誠司を選んだんじゃないの。よく考えて──もう今日は家に帰ってきて、でないと鍵を取り上げるわよ」
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