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キスをして
第13章 律香の本懐
「間に合った?間に合った?」

「間に合ってますよ。日下さん」

会場に入って暫くすると駆け込むように日下さん始めデザイン組が入ってくる。

「何やってたんですか」

「ちょっと発注書を紛失したことに気付いて」

「出来たのか?」

「バッチリです。りっちゃん俺の心配してくれるのか」

「·······は?」

「いいっ久しぶりのその冷たい感じ」

「頭大丈夫ですか?」

『これより──』

始まった式はお世辞抜きでとても綺麗なものだった。
知り合いが幸せそうにしているのは良いものだと実感する。
自分には程遠い物だから尚更だ。

『列席者の皆様は外の階段下でお待ちください』

「りっちゃん。今からブーケトスらしいよ」

「最近ブーケトス減ってきてるらしいですね」

会場の出口からぞろぞろと外に出ていく。
外は芝生が敷き詰めてあるから純白のドレスはよく映えるだろう。

「橘さん。ここ佐伯さんが選んだんですかね」

「どうだろうな。黒沢さんもなんかカタログ山ほど見てたぞ?」

マメだ。
私よりやっぱりマメだ。

「間宮は近くならどこでもいいとか言い出しそう」

「そ!そんな事ないですよ!料金とか料理とかやっぱり気にしますよ」

「りっちゃん。会場の雰囲気とかが先じゃないのか」

「·····もう良いじゃないですか私の話は!」

外で雑談しながら待っているとベールを外した佐伯さんとそれを支える黒沢さんが階段上から現れる。
ブーケトスの案内を受けて独身者達が前に出て行くのを橘さん達に混ざって眺める。

「間宮さん行かないんですか?」

「そうだぞ。りっちゃん独身だろ?」

「いいですよ。30にもなった女が出て行ったら必死みたいじゃないですか」

「でもさぁ多分」

「間宮さーん!ちゃんと参加してください」

「くくっ···行っといた方が良かったろ?」

「ほら佐伯さんに名指しにされた」
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