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キスをして
第13章 律香の本懐
言葉を発することも出来ず微かに震える手でブーケを受け取り後ろに下がった。

披露宴はとても良いものだった筈なのに佐伯さんのカラードレスも綺麗だったし橘さんのスピーチも良かった。沢山良いものがあった筈なのに披露宴が終わった今何も思い出せなくなっている。

視界の端で独身の女の子達に囲まれている姿は本当に遠い人で私の居場所はもう無いんだと思えた。

「間~宮ちゃん。このあと大学組で飲み行く話してるんだけど来れる?」

私の思考を邪魔するように黒沢さんの友人が話し掛けてくれる。

「黒沢は流石に奥さんといた方が良いから呼ばないけどサークルのメンバー揃うことなんてこんな時しかないからさ、どう?」

肩に腕を回され逃がす気がないことを知る。

「律香ちゃん私達も行くから一緒に行こ?旦那待ってるし一軒で帰るから帰り送ってあげるよ」

「ん~じゃあ奈津美先輩が行くなら」

「よし!これで全員参加な。店予約してくるわ」

「よろしく~」

女の先輩達もいるなら早く帰れそうだ。

「律香ちゃん。後でじ~っくり私の結婚式仕事理由に欠席した言い訳をしてもらうわよ」

「·····あ~」

でもなさそうな気がしてきた。

奈津美先輩に付いて会場を後にした。



「今日はありがとうございます。橘さん」

「いいよいいよ気にするなよ。社長は来なくて正解。スピーチ長いからあの人····─それよりどうやって小塚さん呼んだんだ?」

「ネットのインタビュー記事で会社名検索したんですよ。本店っていう書き方がしてなかったからスイス内の全ての店舗に招待状送りつけました」

「鬼だな」

橘さんと二人で話していると小塚さんが声を掛けて来た。
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