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キスをして
第13章 律香の本懐
急に鋭いめで私を見て手を掴む。

「律。その気なら海外はコネの方が安心だよ。待つより希望の会社にコネを作る事だ」

「でも、そんなの」

「コネなら幾つか持ってる。語学は?」

「英語とドイツ語ならほぼ大丈夫かな···フランス語は日常会話くらいしか」

「なら大丈夫。俺が紹介する」

「····コネあるの?」

「勿論。こういう事なら知り合い多いから任せて」

「コネでも良いのかな」

「日本だといい風に取られないこともあるけど向こうじゃ普通だよ?だから気を使わないで···律が条件合うところを選べばいいんだよ」

「じゃあお願いします」

彼にとっては私の悩みなんて何でもないことだったらしい。

「先にシャワー浴びてきて」

「え··と、じゃあ先に入るね」

「その間にそのドレス少し洗っておくよ」

「ドレス?」

「そのままじゃクリーニング出せないでしょ」

あまり意図がよく理解できていない私に言い辛そうそうに続ける。

「律ので裾の方は汚れてる···かな」

「─!シャワー浴びてくる!」

逃げるように脱衣場に飛び込んだ。

「····なんであんな可愛いんだ」

誠司が呟く言葉など聞こえる筈もなくお風呂場に急いだ。

シャワーから上がると洗面台でドレスの裾を鼻歌混じりに洗っている男が目に入る。

視線を手元に移すと丁寧に透かしながら汚れが残っていないかチェックしている。

「何か··やだ!!」

「何が!!?」

「いや···えっと─ありがとう」

「まぁ俺が勝手に汚したような物だけどね」

どうしてこの男は恥ずかしげもなくそんなことが言えるのか。

何か間違ってる気がする。

「律···タオルくらい巻かないの?俺はすごく良いけど」

自分の置かれている状態に気付いて手元のタオルの束を投げ付けた。

「そう言う事の方を照れなさいよ!」

呆気に取られている間に寝室に逃げ込んだ。

パジャマに着替えてリビングのパソコンで仕事のメールをチェックしていると誠司がシャワーから出てきた。
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