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キスをして
第3章 間宮の憂鬱
階段を昇って真っ直ぐ続く廊下の突き当たりの部屋に明かりが点っている。

小塚さんは黙って部屋の扉を開けて待っていてくれる。
部屋に入るとそこはダイニングキッチンで部屋続きの扉を開けてリビングがあった。

「何か飲みますか?」

「いえ、私すぐに帰りますから」

「ビールで良いですよね」

「だから「どうぞ」

話を聞く気はなさそうね…
プルタブの開いた缶ビールを受け取って促されたリビングのローテーブルの前に座った。
小塚さんは私の横にあるソファの前に座って頭をソファに乗せ深く息を吐いた。

「これ飲んだら帰りますね」

「はい」

「……あの~遅くに来たこと怒ってます?」

「間宮さんは好きな時間に来て良いですよ。それに怒ってないですよ?」

さっきまでの張り付いた笑顔が嘘のように機嫌良さそうな顔で笑っている。

「威圧感があるから断れないって言っていたので頑張ってみました」

……………わざとだったの?

「こうでもしないと中に入ってくれなさそうだったので…怒ってます?」

「怒ってます」

「すみません。もしかしたらもう誘っても来てくれないかなって思ってしまって」

「どうしてそん…………!!」

まさかちゃんと覚えて!?

「僕ちゃんと覚えてますよ?本当は酔ってなかったですし」

何事もなかったようにしてるから覚えて無いんだと…思っていたかっただけか私が。

「でも月曜会った時普通にしてたじゃないですか」

「僕からしたのに戸惑ったりしませんよ。距離置かれるのは嫌だったのでプリンの容器で釣りました」

私はまんまと釣られたわけね。
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