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キスをして
第3章 間宮の憂鬱
「僕は言っても聞かないからしかたないんじゃないんでしたか?」

私の手から缶ビールを奪ってテーブルの端に置いた。

「言いにくいなら僕を突き飛ばしても叩いても良いから逃げて下さい」

小塚さんの手はテーブルに置かれたまま私に触れないように顔を寄せる。

私が動きやすいように手を掴むことも髪に触れることもせず、息が感じられる距離で私を窺っている。

逃げればいい。
そう思うのに身体は動こうとせず微かに触れる小塚さんの息が心地良くて、向けられる目が綺麗で見ていたくて

キスの感触が蘇って切なくなってただ小塚さんの目を見てしまう。

「ほら、やっぱり逃げない」

そう言って唇に触れる直前…

小塚さんの口が楽しそうに笑った気がした。

何度も唇を軽く吸って舐めてまるで遊んでいるみたいなキス。
前のキスを知ってしまっているからもっとと思ってしまう。

「あなたに触れて良いですか?」

「……良いですよ?」

返事をしたのと同時に手を掴んで私を引き寄せ耳元から差し入れられた右手は私が崩れてしまわないように優しく頭を支えている。

急に激しくなったキスに翻弄されてしまう。
何度も向きを変えられ舌を奥から絡め取るように吸って舌先で舐められる。

「はぁっ‥ンッ。」

静かな部屋に響く水音が余計に快感を高めていく。
触れる唇はとても優しいのに口内を愛撫する舌は私を犯しているみたいだ。
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