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キスをして
第4章 間宮の受難
あのときと変わらない部屋。リビングに行くと暖房のスイッチを入れて階段横の廊下、リビングの反対側にある部屋に社員証を取りに行った。

1人でリビングに居ると落ち着かなくてついついウロウロしてしまう。
古民家特有の年季の入ったフローリングに色とりどりの細かいタイルでデザインされたシンク。
内装はレトロな雰囲気を残しているのに家具達は新しいものが置かれている。それなのに違和感なく部屋の雰囲気に馴染んでいるのはセンスが良いからなのだろう。

リビングにはとても古そうな振り子時計が飾られていてぜんまい式のその時計の針は止まっている。
綺麗に手入れされている装飾が気になって爪先立ちで盤を覗く。
針には細かな彫刻がされていてすごく綺麗だ。

「間宮さん?」

「ぅわっ」

見入っている間に背後に立っていた小塚さんに驚いてふらつく私を倒れないように素早く支えて心配そうに顔を窺ってくる。

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です」

ふらついて驚いたのと重なって近付いた顔に緊張する。
至近距離に立たれるとあの時に知った小塚さんの香りが私を鈍らせようとするから危険だ。

好きでもないのに反応するのは美形相手だからか、私が浅ましいからなのかどちらかだろう。

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