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キスをして
第2章 間宮と小塚
「重い」

一週間分の食料を買い込むとどうしても両手に持たないと足りない。
とは言っても自分で作ることはあまりなくて基本的に買うのは冷凍食品だ。
虚しいと思ったことはないがもう27歳だ。

いつまでもこのままではまずいとは思う。時折掛かってくる両親の電話すらそんな内容だ。
私だって先を考えないわけではない。でも結婚への願望が芽生えないし、昔から憧れも理想も持てなかった。
独身でいるのが駄目だと思ったこともない。

自宅に戻ると時計が12時を指している。手早く食品を冷蔵庫にしまい、食事を軽くすます。
ネイルを直して布団を取り込んで予定をこなした時には既に時計は16時を過ぎていた。

小塚さんと出掛けるならそろそろ支度をしないとまずい。まずいけど…未だに行こうか悩んでいる自分がいる。
いや、悩む位なら行かなくてもいいでしょ。そうだ。面倒なことはわざわざしなくても良いじゃないか。
私はスマホを手に取り小塚時計店に電話をかける。

……でも、なんて断ろう。まさかこんな時間から仕事な訳ないし。まぁ、体調が~とかテキトーに。
なんて考えていたら、

「お待たせしました。小塚時計店です」

落ち着いた彼の声がした。

「間宮です。今日の約束なんですが「店が早く閉められそうなので5時過ぎに降りてきて下さい」

「えっ『プープー』

切られた?切れた?いや、切られたよね…

「話聞きなさいよ!」とスマホの画面に言ってみたが状況は変わらない。しかも時刻は16時半。
急がないと間に合わない。仕方なく彼との会話を諦め支度を急いだ。

やっぱりこの男にはペースを乱される。
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