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キスをして
第5章 小塚の本領
「間宮?今頃来たのか?」

「おはようございます。黒沢さん」

2人でエレベーターに乗り事務所に向かう。どこかしら機嫌が悪そうなのは営業先で何かあったのかもしれない。
余計な事聞くと怒るから聞かないけど。

「お昼戻ってくるなんて珍しいですね」

「たまにはな。で、さっきの男誰?」

見られてたのか‥

「近所のお兄さんですよ。出掛けるついでに送ってくれたんです」

「ついでね。よく知らない男にあんまりくっついて行くなよ」

「黒沢さんには関係ないじゃないですか」

自分がフラフラしてるみたいな言い方に苛ついて言わなくていいことを言ってしまった事に気付かなかった。

「そうだな。俺にはもう関係ないな」

開き掛けたエレベーターを強引にすり抜けて足早に行ってしまう。
「嘘がヘタなんだよ」
小さく何か言ったのは分かったが私には聞き取れなかった。

怒らせた‥。
心配してくれただけなのは分かってるのに。

せっかく平常心でいられていたのに一気に奈落に落とされた気分。
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