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キスをして
第5章 小塚の本領
「今なんか言おうとしたろ」

「いいえ」

新卒の頃はよく面倒見てもらったけどアシスタント卒業してからあんまり外で話さなくなったもんなぁ。

「「さっむ!」」

もうすぐ11月なんだから冷えて当たり前だけどやっぱり寒い。

「間宮このまま帰るのか?」

「はい、橘さんは会社に戻るんですね」

「おぅ、気をつけて帰れよ」

結局帰るのは遅くなったが気は紛れたかも。
終電じゃないだけすごく良いけど。
アパートに着くと時計店の灯りが点いていたが小塚さんには会わなかった。

会って文句言った所で勝てる気もしないしまた巧く流されないとも限らない。

お酒も入っていることだし気分のいいまま布団に潜った。

いつも通り出社しデスクに着くが受け持ちの仕事は終わっているからかなり暇だ。暇な間にデザインのストックを増やしていく。このストックがなくなると私はまた徹夜集団の仲間入りになってしまう。
使い回しが出来ない分応用が利くデザインは考えて置いても損はない。

昼を迎える頃には自分の中のノルマは達成できた。

こんなに早く仕事が落ち着くのは小塚さんのお陰みたいな物だが間違ってもお礼を言うことはない。

たまには近くのカフェにでもテイクアウトを頼もうかと財布を持って出掛ける事にした。

「昼外出しまーす」

「そんな暇があるのかりっちゃん!」

「持ち分終わりましたから」

全員に驚愕と羨望の眼差しを向けられるが知ったことではない。

「僕初めて見ました!」

「橘さん!りっちゃんを優秀に育てすぎですよ!!」

聞かない聞かない。

捕まる前にと逃げるに限る。
勿論後で仕事は幾つか引き受ける気でいるから構わないでしょ。
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