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キスをして
第5章 小塚の本領
小塚さんがキッチンで料理を仕上げている間にも雨脚は強まりソファ横の窓には雨が叩きつけ始めている。

「今日は店閉めようかな」

「閉めるんですか?」

「ん~土曜日だしなぁとは思ってはいるんですがこれだけ雨が降ると人も来ないですからね」

「そんな風に決めてるんですか!?」

ダイニングテーブルに料理を運びながら思案する小塚さんは休みたそうな顔をしている。

休みたくても好きに休めない私には羨ましい悩みだわ。

美味しそうな香りに釣られてテーブルに着けばお洒落なワンプレートのモーニングが出来上がっている。洋食もおいしそうと涎まで出そうになる。

食に敏感に反応するのは普段の不摂生のせいだろうか。

とろとろのオムレツ美味しい~。
サラダのドレッシングまで美味しい。

「看板は出さずに作業だけしようかな」

「それなら開店した方が」

「もし人が来たら対応はしますよ」

実は仕事が溜まっているらしく作業に没頭する気みたい。確かに人の対応って結構時間とられるもんね。

食事を終え一息吐いた所で小塚さんは作業場に降りていく。
「ゆっくりしてて下さい」と言われたけどいつまでも何もせずに居るわけにもいかない。
結局私も遅れて下に降りると作業机の前にルーペを付けて猫背になりながら時計を弄っている姿が見える。

仕事してると格好いいなぁ。

細かな部品を弄っているが私にはなにがなんだかさっぱり分からないけど凄いなぁと純粋に思う。

「間宮さん、見るなら座敷に座って見て下さい」

素っ気なく声を掛けられ邪魔しちゃ悪いと帰ろうとするが「そこ座って」と座敷の座布団を勧められてしまう。

また作業に集中し始めてしまい私が声を掛けても返事がない。
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