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キスをして
第5章 小塚の本領
勝手に帰るわけにもいかず座布団に座りながら作業の音を聞く。

でも何だろうずーっと音を聴いていると眠くなってくる。寝てはマズいと思うが私の視界はぼやけていく。

「眠たいなら寝てて良いですよ。いつもそうやって1日が過ぎてしまうんですね」

「家で寝ます」

「雨凄いから落ち着くまで寝てて」

私を強引に横にさせてソファに掛かっていた毛布を掛けてくれる。
優しく頭を撫でられると段々瞼が重くなっていく。

「おやすみ」

――――

眠りから覚めるとそこは現実だ。

「りっちゃんお疲れぇ?」

寝起きの日下さんは殺意が湧いちゃう。
土曜の小塚さんとは随分な違いだわ。
どうやら休憩室の長椅子でうっかり寝てしまったらしい。

時計を確認すれば10分程度の事だったみたいだけどこの会社では命取りになりかねない。

土曜にゆっくりし過ぎな位にのんびりとあの家で過ごしてしまい(半ば強引だったけど)、家に帰ったのは雨脚が落ち着き始めた夕方だった。

週の半分を終えても相変わらず終電帰りが続くが小塚さんに連絡はしていない。
向こうも連絡をしてこないところをみるとアレは冗談だったのかもしれない。

「りっちゃん急ぎの仕事溜まってないなら帰って良いんじゃない?」

「でもまだ6時ですよ」

「うちの定時5時だよ?」

「今日の日下さん変っ」

「ヒドい!俺だってたまには優しくできるよ!」

いつも素直に帰らせて欲しいものだわ。
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