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キスをして
第5章 小塚の本領
エレベーターに乗って階下へのボタンを押しドッと押し寄せる疲れを感じながら壁に凭れる。

4階の事務所から降り始め3階でエレベーターは止まりドアが開くと若い男が重そうなダンボールを抱えて入ってきた。

「ご苦労様です」

まだ別の事務所も残ってるんだ。
3階ってなんの会社だっけ?

「ご‥ごくろうさまです」

小さな声で少しどもりながら挨拶をする男は長い前髪で顔が隠れている。

「1階ですか?」

「‥はい」

私の事務所はよく話す人ばかりだからこのタイプの人は新鮮だなぁ。
うちに来たら確実にいじられキャラか?

エレベーターが着きドアが開いた瞬間急いでいたのか開ききらないドアにぶつかりダンボールが落ちた。

「大丈夫ですか!?」

「す‥みません」

「あっ!革の工房だ!」

「え?」

「ごめんなさいっ、3階ってなんの会社だったかなぁって考えてたものだからつい」

あぁ、驚いてる。驚くよね。知らない女が急に大きな声出したら驚くよね。
恥ずかしい。

「可愛い財布ですね」

落ちた財布を手渡すとおどおどしながら受け取って外に出て行った。
人と話すのは苦手なのかしら。スルーされちゃった。

私も後を追う様にビルを出て駅に向かった。
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