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桜木母娘の奮闘記
第1章 敵
男がその場から離れると、残されたのは二人の女だけだった。
会話はない。
ここで口を開けば負けという暗黙のルールのもと、冴子と由美は動かないでいた。
「…」
最初に動き出したのは、冴子の方であった。
ゆっくり腰を持ち上げ、空になった菓子盆を片付けはじめる。
「…由美、そろそろ勉強しなさい」
『…わかってるよ』
不機嫌そうな由美の顔を見て、冴子はクスリと笑う。
「いい子」
パチン
パチン
枝を切る音は止むことがなかった。
この音がなり始めたときから、冴子と由美の奮闘が始まったのだ。
ただの母娘だった二人が、一人の女として敵対するようになったのだ。