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桜木母娘の奮闘記
第1章 敵


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「木村君、今日はまだ時間がかかるかしら?」



「ああ、そうですね、まだ少しかかるかも…
用事でもあるんですか?」



「いいえ、のんびりお願いするわね」





首を少し傾げた。


お母さんは、知ってるんだ。



男に見せる仕草ってのを…






「天気が良くて、良かったわ」


「ほんとにそうですよっ、雨の日なんて最悪ですから」





どうでもいい会話が続く。



あたしはこういうところに口を挟むのが苦手だ。



大樹さんの前だと、普段見せないお母さんの姿がたくさん見られる。


正直、ウザい。








「さて、それじゃ続きでもしましょうか。
お茶、ごちそうさまです」





大樹さんは立ち上がると、頭に巻いていたタオルのズレを少し直した。



首を伝っていく汗が服の袖で軽く拭われる。



その五秒間、あたしは何も動けなかった。




「あんまり頑張らないでね」



「いえいえ、仕事なんですから」




お母さんの気遣いが撥ね除けられたみたい。


あたしの口元が、軽く緩む。






大樹さんは脚立に乗り、また木と向き合った。



こうなってしまえば、大樹さんはあたしのものでなくなると同時に、お母さんのものでもなくなる。






安心、出来る。








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