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シャネルを着た悪魔
第4章 ☆CHANEL NO4☆
「何、ボーッとしてんだ」
「今朝の事思い出してた」
私の決め台詞に──、あの夜みたいに彼は大きく笑った。
そして『じゃあ今日が最初で最後のデートか。ポールも居るけどな』と付け足してから、自らの出かける用意を始めたのだ。
「クソ野郎、なんて女に言われたのは初めてだ」
「私もそんな汚い言葉使ったのはじめてよ」
まるで赤ん坊の様な顔で、今日は……今日だけは側に居てくれ。といわれたら、さすがの私でも頷いてしまう。ポールと会うためっていうのも勿論、有ったけどさ。
「アンタの腐り具合にはびっくりした」
「俺、そんなに腐ってるのか?」
「ええ。リョウの事、成金って言ってたけど彼は人の気持ちをお金で買う様な真似はしないわよ。このスターサファイアも『彼の気持ち』であって、『私を引き寄せる道具』では無いから」
「俺は気持ちまでも買おうとしていなかった」
「時間を買おうとしたでしょ。この便利な世の中、お金で買えない唯一の『時間』と『気持ち』は同等の価値を持つのよ」
角砂糖を一つ、紅茶の中に落とした瞬間──ドアからベルの音が聞こえる。
二人して振り向いたその先には──。
私が何年も思い焦がれた男性が立っていた。