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シャネルを着た悪魔
第4章 ☆CHANEL NO4☆
「テヒョン!」
「ポール」
男同士、熱く抱き合う。
私や周りのサラリーマン・お金持ちそうなマダムはテヒョンの正体に気付いていたけど何も言わなかったし表情にも出さなかった。
でも──今は違う。
あのスター、ポールと共に立って……そして抱き合っているのだ。
イヤでも見てしまうのだろう。この喫茶店に居る者で目を逸らしているのは一人として存在しなかった。
「彼女は?」
「今日”だけ”の彼女だ。スーパー通訳だと思ってくれて構わないよ」
笑顔で左腕を出される。緊張して今すぐにでもトイレに駆け込みたい気持ちを抑えて、平然を装いながら握手を交わした。
「ポールだ、君も韓国の方かい?」
「私は日本人です、リサと申します」
何度もドラマで聞いていたイギリス訛りの英語が、やけに色っぽさを感じる。
「日本人か、じゃあスーパー通訳じゃなくてスーパーガイド、だね」
紳士らしく椅子を引かれた私は、もう一度静かに気持ちを落ち着けながら着席した。
それに続いてテヒョンとポールも座り込む。
「リサちゃんの服装、とても似合ってるよ」
青色の瞳が私の事を上から下へと捉える。──私は、この瞳から一生抜け出せないかもしれない。そう思えるほど綺麗な瞳をしていた。
「ありがとう。これテヒョンのチョイスなの」
「ああ、テヒョンらしいね。」
真っ黒のルシアン・ペラフィネのドクロが描かれたロングシャツに、ダメージが入ったスキニージーンズ。足元はお洒落なインヒール入りのハイカットシューズだった。
黒がメインのシンプルコーデだけど、足元のシューズは季節を表す──そう、カルティエであの日買ってもらったのと全く同じカサブランカの色だった。