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シャネルを着た悪魔
第4章 ☆CHANEL NO4☆


重たい段ボールを一度、床に置いてからバカになっている機械にもう一度、指をかざした。

この行為は三回目だ。


──出社して早1時間でまた帰宅するなんて、本当に思ってもいない事ばかりが起こる最近。お祓いにでも行こうかな。

「……柳沢さん?」


扉があく音がする。顔見知りの警備員さんが中から出てきてくれた。

「あ、お久しぶりです」


「お引越しされたんじゃないんですか?」

「いいえ。今朝、普通に出社しましたよ。会ったじゃないですか!」


「はい。その後直ぐに代理人の方が、不動産会社の方とお入りになられましたよ」


自分の耳を疑ったのも、指をかざした回数位は本日だけで突破しているかもしれない。

人差し指を丸めて直してから──静かに、警備員さんを見た。


不思議なモノだ。顔なんてほぼ毎日合わせていたし挨拶もしていた。世間話だって何度かした事がある、それなのに……名前が出てこないんだから。


「代理人って──?」

「私も詳しくはわかりませんが、そこのロビーで印鑑を押したり色々としていました。」



「確かに、私の代理人ですか?」

「はい。どちら様がお引越しされるんですか?と会社に聞いたら、大林さんが『柳沢さんですよ。今日付け──というより今付けですね』と。」


大林さんとは、私が……この家を買ってくれた彼氏と付き合ってた時からお世話になってた不動産会社の方だ。

分譲だから、それなりにエレベーターの不具合とか近隣の騒音で連絡した事がある。


「でも、ここは分譲でしょ?引っ越しなんて──」

「不動産会社に再度売った形になってますよ。そういう話も聞こえましたし。──というより、代理人じゃないんですか?あの黒髪の女性」


「黒髪の女性?」


「はい。とても清楚な方でした。てっきり柳沢さんのお姉さんか何かかと──」


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