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シャネルを着た悪魔
第4章 ☆CHANEL NO4☆
ハッピースポーツの時計は、ダイヤを転がしながら午前11時半だと私に時刻を知らせてくれた。
財布の中に入っている三千円を使ってタクシーで移動したのは、私が契約をした支店である東京駅前支店・東都信用銀行だった。
仕事で使っていた印鑑は、幸運にも設定していた印鑑と同じ。だから前の家に入れなくても、お金は何とか引き出せそうだ。
番号札に書いている6番が、モニターに表示される。
バッグと段ボールを持って、堅物そうなおじさんの前に腰かけた。
「お金を──引き出したいんですけど」
「……ATMではなく窓口で、ですか?」
「はい。」
あまり顔を見られたくない。到底、美人とはほど遠い顔だから。
カルティエの財布の中から、キャッシュカードと身分証明書を取りだした。
「まずは、こちらでご登録情報をお調べいたします。」
「はい、お願いします」
「柳沢……リサさんですね」
「はい。」
きっと『何て、陰気なオーラを出す女なんだ』と思われているだろう。
でもそう思われて当たり前なんだ。
今の私には、一生懸命に貢がせた家も無ければ車を動かすキィもない。バッグも時計もネックレスも──。女を輝かす『現金に化けるモノ』がないのだ。
「──、あれ?少しお待ちくださいね」