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シャネルを着た悪魔
第4章 ☆CHANEL NO4☆
あの日──。
私がプリティー・ウーマンになったカルティエ・銀座店で感じた支店長の普通じゃない態度。
そして、家で感じた彼の『育ち』の不思議──。
「やっぱり──」
「どうかしたのかい?」
あの時思った【帝国グループほどじゃなくても、どこか財閥の出身なのかもしれない】という女の勘は当たっていたのだ。
だから、朝食の時ニュースを見たがらなかった。そして──私が財閥を財閥として見ていないと言ったから……彼は私に惚れた。
会社に取引を辞めると言ってきた数社の中にも、必ずBNエンターテイメントが含まれているに違いない。彼は世界のアーティストでも有り──財閥の血筋でもあるんだ。
それだったら、彼が筆記体で書いた文章の中に『社交界での地位』と書かれていた事にも納得がいく。だからこそ──彼は私にマナーを教えようとしていた。
思い返せば、納得いく節が幾つか有った。
そして、外枠がほとんど完成したパズルの様に一つが繋がると──不思議と全てが繋がっていくこの感覚。私がこの感覚を持つ時は──女の勘が外れた事がない。
「……とんでもない男に惚れられたんだね」
そうだ、とんでもない男に惚れられた。
「──この指輪、売値では想像もできないよ。きっと1000万近くはいってるに違いない。ゴールドも本物、石も本物だ。もう50年以上鑑定師をしているけどバブルの時でも、これほどまでの指輪は見た事がなかったよ」
「え?」
「自分で買っていないんだろう?」
「───。」
「素敵な男性に惚れられた──というのか、売るんだから『とんでもない男性に惚れられた』というのか、それは君次第だね」