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シャネルを着た悪魔
第5章 ☆CHANEL NO5☆
『お嬢ちゃん、どんな理由でそんなに焦っているのかは分からない。』
『でも、これは聞きたいんだ。”質預かり”っていうシステム知ってるかい?』
耳障りになったのだろうか?
店主の老人がラジオを消した。正月だというのに入り組んだ土地柄、子供の声一つ聞こえてこない。
「質預かり、ですか?」
「ははっ。若い子はさすがに知らないか。……例えば、この指輪を買い取るのではなくて私が店で預かったとしよう」
「はい」
「まず期限と貸してほしい額をお客さんは私達に言うんだ。ただし条件が有る、それは”預けた物よりも高額は借りれない”という簡単なものだけどね」
「──それって……」
「誰から貰ったのかは分からない。でも君は……」
「また這い上がってこれる気がするんだ」
「這い上がった時に、これを戻したら良い、と僕は思うんだが」
彼は、又も泣きそうになってる私を見て事細かに説明をしだした。
つまりは──今から50万円を貸す。期限は一年、一年経っても来なかったらこの商品はこっちで一生預かる事になる。一年以内に50万円を持って又ここに戻ってきたら──その時は『スターサファイアの指輪』を返す、というものだった。
「お嬢ちゃん、本物を分け与えてくれる人を大事にしないとダメだよ」
「こういう時に資産になるのは、本物の服・本物の宝石・本物のバッグだ。」
「ネームバリューに囚われないことだ。それがノーブランドでもシャネルでもカルティエでも素晴らしいものは時代を越えて資産になるし、素晴らしくないものは来年にはオジャン同然。」
「それを……本物の資産を……武器として輝く人間こそが『本物の女』だ」
「──ただ、捨てる覚悟はいささか早いんじゃないのかな」