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シャネルを着た悪魔
第5章 ☆CHANEL NO5☆

ガタイの良い男性二人が入口の前に立っていた。

私は咄嗟に財布の中から名刺を取りだす。この前は韓国支部長の顔を見て『あぁ』という表情だったし──会社の名前が印字されているこのカードは有効に使える、と踏んだのだ。

例えそれが──今は存在していない社員の名だったとしても。


「アミューズの柳沢リサです」

「アミューズ」

憎い会社の名前を復唱した、ザ・韓国人顔の男性は隣の人の顔を見てから少し考える素振りをする。

──どうやら、先に思い出したのはもう一人の方だったみたい。

韓国語で何やら二言程度、名刺を持つ男に声をかけると、難しい顔がウソだったかの様な笑顔に早変わりした。


私の咄嗟の判断が『勝った』証拠だろう。


「本日は待ち合わせですか?」

「いえ、ですがツアー衣装の件で謝罪に伺わないといけない案件がありまして。」


「そうですか、では受付の方でお話し下さい。」


韓国にきて英語を話すのは、二度目。

でも前回とは又違った感情を持っている。



これが憎しみなのか焦りなのか──私の性格特有の『どうにかなるさ精神』なのか……。


そこまでは”エックス”に会うまではわからないだろう。


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