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シャネルを着た悪魔
第5章 ☆CHANEL NO5☆
「アンニョハセヨ」
「アンニョ」
とても綺麗な受付嬢が一人。こんな大企業なのに彼女だけというのは可笑しい。
でも──時計を見ると時刻はもう19時前だった。この時間に会社を訪問してくる人は少ないのだろう。それが芸能事務所と云えど……だ。
現に前回のお礼周りの時もお昼に伺った。
「アミューズ株式会社の柳沢です。」
「アミューズさんですね」
「この度は──」
アイツの名前を言うだけでも、ヘドが出そうだ。
でも……言わなきゃ前に進めない。
目の前の美人にも気付かれないほど、小さく深呼吸をした。
「”Sfire”の”テヒョン”さんに用事があって事務所に伺わせて頂きました」
「テヒョンさんですか」
「はい。ツアーの衣装の件でこちらが要望に沿えない点が御座いまして──。それを彼に直接報告してこい、と本社に言われましたのでイキナリですが「テヒョンは、訪問についてはご存知でしょうか?」
「もしかすると、知らないかもしれません。ラッキーなお知らせならまだしも『サッドネス』なお知らせですので──。直接お会いして謝罪の言葉を申すと共に、次案も伺いたくて」
カラーコンタクトの入った瞳でジッと見つめられる。
私も負けじと見つめ返した。──顔立ちでは負けているが、伊達に国際営業課の人間として世界的な雑誌の編集部の人間やEU拠点の”バリキャリ”たちと話してはいない。
その……私の過去の業績を表すかの様に、彼女は考えた末『少しお待ちください。今からテヒョンさんに電話をお繋ぎします』とつぶやいた。
まだ若い印象を持つけど……しっかりしているな。という感じ。
──まあ、ファンが過激と言われるk-pop界の最大芸能事務所の受付なんだから、これくらいしっかりしていないとやっていけないのだろう。