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シャネルを着た悪魔
第6章 ☆CHANEL NO6☆

壁には私が好きなルノワールの絵と──愛車だった『フェアレディZ』のポスター。

ネスカフェだって置いてくれてるし、私は何も食べないつもりだったけど──起きたら必ず目玉焼きとフレンチトーストが置いてある。夜になると、彼がドコかで持って帰る様に支度してくれたらしきご飯が有るのもザラだった。


──唇をキツく噛んでしまう。

駄目な癖だってわかってるのに……。



「───っ。」


「何なんよ……。」


極めつけには目の前に250万円相当のシャネルの服やバッグだ。


「何考えてるんよ──っ」

大きな窓には赤い夕陽が少しだけ顔を見せている。

高い天井に設置されているシンプルなライトは、自らの明かりを灯していない。部屋は、西日の当たる部屋になっていた。


「違う、分かってる」


そう、分かってる。

涙は枯らしたハズだった。


でも──ああ、時は無情だ。


「彼は私を大事にしようとしてくれてる」

「彼なりの手段が強硬だっただけ」


「──大事にしようと……してくれてる。ただ──振り向いてくれなかった女を、帝国グループの力を使って一度どん底に落としただけ……。」


小さい時からお姫様になるのが夢だった。大人になったら玉の輿にのって何も我慢する事のない不自由のない生活をするって決めてた。

欲しいものは、それがジバンシィであってもバレンシアガであっても欲しいのだ。


今は……きっとそれが桁の違うフェラーリやアストンマーチンで合っても買えるだろう。勿論、望んでいた『己が汗水垂らして得たお金ではないお金』の力で──。


でも、違うんだ。


「私の……『本心から』望んでた生活はこんなんじゃない」


彼には申し訳ないと思っている。


「私は──彼と一緒になる事によって自分がヒロインだなんて、『本心からは』絶対に思えない」


一滴の涙と共に出た言葉は、韓国での『初めて口に出したウソ偽りない本音』だった。


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