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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆
そうしていると、人が近くに来た気配を感じた。
驚いて目をあけると、お洒落なハットに韓国らしくない普通の眼鏡をしている男性が目に入る。
私も煙草吸おう。そう思って一本取りジッポで火を付けた。
目の前の男性は100均のライターみたいなので付けようとしているけど、オイルが無いからか風が強いからか、中々火がつかないでいる。
見かねた私が、ホステスさんがする様に自分の目の前で火をつけて、手で風を遮りながら彼の目の前へ持っていった。
「ワオ、カムサハムニダ」
「チョンマネヨ~」
彼が私のジッポを見つめている。
これは高いとは言えないけど自分でデザインをして色も自力で付けた。中々のお気に入りの品。見つめられるのはイヤな気はしない。
画家のモネの絵みたいな色使いをしている。鮮やかな色が多い。
「Japanese?」
「ah..yes. why you know?」
いきなり話しかけられた事と、日本人とバレたことに驚いて目線をジッポから彼に移した。
かなり端整な顔立ちしてるじゃん。——というのが第一印象だ。
「発音が可笑しかったかな?」
「可笑しくはないよ。ただ、日本人でもそうだと思うけど"ありがとう"って言われて丁寧に"どういたしまして"って言う人少ないでしょ?」
「あぁ、確かに」
「オッケーとか、いいよ。とか……その文化と似てるんだよ、韓国も。」
「だからバカ丁寧にどういたしまして、と言われて発音も訛りがあったら、日本人かな、と思うもんだよ」
「へえ。中国人だとは思わなかったの?」
「中国人は……ちょっと違うね。ライターを自分の前でつけてから人に渡すことはしない。」
ま、それはホステスさんでない限りは日本人でもそうだと思うけど。でも彼の言ってる事は結構腑に落ちた。
確かに綺麗な日本語なのに『どういたしまして』は余り聞かない。大人になると余計に。
「そのジッポ可愛いね」
「あぁ、カムサハムニダ~」
「チョンマネヨ~」
イケメンな目の前の彼が、そう言ったので思わず目を合わせて二人して少し笑ってしまった。