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シャネルを着た悪魔
第6章 ☆CHANEL NO6☆

大きなテレビに流れているのは、彼がユーチューブとつなげて流している黒人の方のPV。曲調的に、これはヒップホップかな?

この歌手が有名だと分かったのは、PVにペネロペ・クルスが出演していたからだ。彼女のカーヴィーボディーは女から見ても『抱きたい』と思わせるほど魅惑的。

あの日の朝は彼がコーヒーを淹れてくれた。

でも今日は──私が淹れる。


私達の仲を表すかの様に決してペアではない、真っ白のマグカップを二つリビングテーブルの上に置くと、ガラスが少しだけ曇る。──ガラステーブルだとこういう事になる。だから私は使わなかった。


「ミルクは?」

「入れた。砂糖も少しだけ」


「太るぞ」

「いいでしょ、これくらい。強制連行されたも同然なんだから甘いものは食べたくなるわよ」

「それなら、一か月意地はらずに食べたらよかったんだよ」


「うるさいわね。意地もはるし、理解にも苦しむのがフツーよ。北朝鮮みたいな事してるとアンタいつか帝国グループも潰されるわよ」

「ふっ、潰されるワケねえだろ。『天下の帝国』だ。今、会社の資産はあの『ゴールドマン・サックス社』よりも多い。」


「ゴールドマンサックス?」

「知ってるだろ」


「アメリカの超大手」

「そう。経済界のドンともいえる」


「帝国ってそんな凄いんだ」

「ああ。そんなのも知らねえのか」


「誰?私にインターネット使える環境を渡してないのは」

「………。」


「まあいいけど。どうせフェイスブックとかからSOS出されてそれをリョウが見ると困るからでしょ?」


「………。」


沈黙は正解だ、と母親に教えられた事がある。

今が、まさしくその状況。


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