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シャネルを着た悪魔
第6章 ☆CHANEL NO6☆

『女は強い』

とは昔から言われている言葉だ。私はそれはてっきり、出産の痛みに耐えられるとかそういう意味の強いだと思っていた。

だけど──違うのかもしれない。

その意味は───。


「はい!あと五回いきましょう!」

両腕を横に伸ばして、お尻を突き出し倒れこむギリギリの深さまでのスクワットをしながらそんな事を考えていた。

きっと『本心』で求めていない夢を、まるで求めていたかの様に脳みそにウソを付けるその行為こそが『女は強い』と言われる何よりもの証拠なんじゃないのかな、と思う。

あんなに泣き喚いた私も、根性決めたあの日からもう二週間も経った今は、新しく覚えている言語の勉強が結構楽しく思えてきている。


現実的に考えるのなら──。

あんな出会い方をして、こんな連行のされ方で韓国に引っ張り込まれたアイツを心の底から好きになる事なんて無いだろう。


でも──。

女として考えるなら『痩せる事に集中しているだけで好きな事をさせてくれる環境』は楽そのものだ。

私が自分で動いているだけで、きっと彼は私が毎晩毎朝ご飯を作らなくても洗濯を回さなくても文句ひとつ言わないだろう。


彼も、どこか『犯罪者に近い心理』を持っている。と思う。



「はあい!リサさん!終わりましたよ、少しお尻が小さくなりましたね」

カナダ訛りの英語で話しかけてくるインストラクターさんは、身長が167センチもあるらしい。さすが女性にも『3高』を求める国、韓国だ。

此処はBNエンターテイメント社だけでなく韓国芸能界やセレブご用達のジムらしく別料金を払えばこうやって個別指導もしてくれる。

私の『何で必死にトレーニングしてる姿を他人に見られないとダメなの!』っていう珍しく"本音の愚痴”を苦笑いで聞き入った彼からのプレゼントだ。

「今日は、サイズ図っていきますか?」

「いや、大丈夫です」


「分かりました。」

何やら紙に数字を書き込んでいるユナさん。野菜とタンパク質を中心として炭水化物を夜と昼、抜いているこの食生活とトレーニングのお陰で体重は二週間で2キロ落ちた。
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