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シャネルを着た悪魔
第6章 ☆CHANEL NO6☆
午後21時に差し掛かる少し前。コーヒーを飲み切った彼は立ち上がり、バッグの中を触り始めた。仕事に戻る準備をしているらしい。
「今日「てかさ」
……被った声。
昔からの癖で人と被った時は私が一歩引く様にしている。それを彼は察したのか、一度チラッと表情をうかがう様に振り返ってから、また話はじめた。
「明日は?」
「土曜日でしょ。何もないけど」
「知ってる。予定入れてないのかって」
「入れてないよ。友達もいないし」
「────。」
「何よ」
「……もし夜遅くなっても良いなら付いて来るか?」
「明日の話?」
「違う、今日。音楽番組のYAHHあるだろ?」
「ああ、うん」
最近割とみている番組だ。
日本みたいにトークの時間は無くて、歌手たちが歌っている所を流しそれを司会者たちが見てから──感想を述べてみたりとかしている。
放送時間は22時30分から30分。深夜の音楽番組、っていえば分かり易いかもしれない。
「それの撮影なんだよ。で隣のスタジオにたまたま後輩グループが居るらしいから、何人か希望者連れて飯連れていくつもり」
「さっきご飯食べてたじゃん」
「──それはそれだろ。俺も後輩に向ける顔ってのがある」
「……。同じ会社の子?」
「違う。全然。──むしろ、小さい会社から成功した若い子達ばかりなんだよ、だから応援っつったら何だけど可愛がってやりたいと思ってる」
「へえ。」
「で、来るのか?来ないのか?」
「──え?私についてくるか来ないのか聞いてるの?」
「話の流れで分かるだろ、それくらい理解してくれよ」
本気で呆れた顔をされた。
「……。まあ、友達もいないし彼氏もいないし、出来たら良いかな」
「どっちが?」
「友達が一番、彼氏に関しては”韓国人”だし」
「はは、おめえもまだ言うか?」
と笑った彼は『20分でマネヒョン迎えに来るから用意しろよ』とすでに寝間着に着替えている私に言い放った。
もう春になる、でも韓国は寒い。特にこんな時間は──。
今日は、あのシャネルのワンピースを着よう、とマグカップをシンクに戻しながら考えた。