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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆
青い空の下に、沢山の人が歩いている。
スーツを着ている格好良い人もいれば、良い服を着ているはずなのに垢抜けない人もいる。
服飾関係の仕事というのは、こうして周りの人のファッションも見てしまうのだ。一種の職業病に違いない。
韓国最終日だというのに絶賛二日酔いの私は朝から太田胃散を飲んで、ブレスケアのガムを三回も食べて、いつもより少し遅めの10時に出社した。
今日は得意先に訪問する日なのだ。
VIP得意先の為、本社の日本から誰かを送って挨拶させよう、という魂胆から私が出張することになった。そう本チャンはあくまでも今日なのだ。
「おはよー」
「おはようございます」
「ほら、ヌナ!乗って!」
「ピョンいつもより可愛いね。」
ピョンというのは本名ではない。
ただウサギみたいに可愛い子だったからお酒のノリもあってか私が勝手に名付けてみた。
「ありがとう!」
と勢いよく言われて、背中をこれまた勢いよく押される。
ヒュンダイ社のセダンに乗り込んだのは顔色の悪いトップと私と——正反対にいつもより可愛いピョンだった。
「二日酔いですか?」
「あぁ、俺ももう年だよ。……里紗さんはあんなに飲んでたのに二日酔いじゃないのか?」
「二日酔いですよ。だからいつもとメイクを変えて、顔色悟られない様にしました」
「だから今日はエキゾチックな感じなのね」
「うん。今日のテーマはベリーダンスが上手なアラブの女性だから」
ぷぷっと吹き出したピョンの頭を軽く叩いてから、窓を見る。
道行く人は幸せそうな人が多かった。
そっか——もう少しで年末。つまり後少し頑張れば、連休だもんなあ。
「オンニ!今日は絶対にビックリするからね!」
「何が?」
「得意先よ!得意先!」
「へぇ、そんなに大きな会社なんだぁ」
生憎、国際営業課というのは見せかけだけで、しばらくは日本企業との取引ばかりを担当していた為、韓国のことは頭になかった。
しかもブラジル出張やドイツ出張の時とは違い今回は得意先への挨拶周りのみ。
上司は楽だなぁ、なんて言ってたけど相手が大企業なら、それもそれで緊張する。
資料くらい渡しておいてほしいくらいだわ。