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シャネルを着た悪魔
第7章 ☆CHANEL NO7☆
「ちょっとウルサイんだけど」
カーテンから少しだけ顔を出した彼は、静かに言った。
少しだけシーンとなる店内。
まさかサファイアのテヒョンが三階というバリアの張られた空間から降りてくるワケないと思っていたのだろう。男性トイレは三階にあるしね。
「ふんっ、芸能人が偉そうに何言ってるんだ」
「ヒョン!」
クー君が急いで、アホボンを止めたけど彼も相当酒が入っているし私の言葉にイラついているハズだ。とどまる事を知らない様だった。
「アンタらのスポンサーか?」
「………。」
「差別主義者をスポンサーに持つとドコかでボロが出るぞ。俺からの忠告だ、どこの事務所に所属してるのか知らねえけど」
「従う”大元”がちゃんとしている所で活動しねえと、どんなに頑張っても必ず足を引っ張られる」
「偉そうに。たかがBNだろう」
「ああ。アートの長男からしたら『たかがBN』かもしれないが、俺はサファイアのリーダー、ソン・テヒョンだ」
「芸能人が財閥と戦おうってか。おめえもアメリカで働き過ぎて国内の立ち位置を忘れたか?」
──優位に立ったつもりかもしれないけど。……本当の姿を知っている私からしてみれば、立ち位置を忘れてるのはアンタの方だと言ってやりたい。
まるで先生の悪口を言っている友達が、後ろに──その人物が到着したのに気付いていない。忠告すべきか、しないべきか……と迷っている学生の様な気分。
「いいぜ。宣戦布告か」
「何がサファイアだ、芸能人だ。顔やスタイルを武器にして営業してる野蛮な職に就いてる男がアート財閥という由緒正しき家に生まれた長男に勝てると思ってるのか?」
「俺から質問だ。おめえはアート財閥が由緒正しくて歴史のある会社だと思ってるみてえだけど、潰れる事は一生無いと思ってるのか?」
「ああ。財閥は潰れないさ」
「芸能人は人気商売だから直ぐに廃れていくけどな」
「ははっ」
カーテンを全開に開けて、私を後ろから抱きしめたままの格好で大きく笑ったテヒョン。
「威勢がイイなあ。じゃあおめえにも忠告しといてやる。一週間以内にコイツに日本人を侮辱した事を謝罪しなければ──おめえがそうやって自由に遊べるお金すらも無くなる可能性があるって事をな」