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シャネルを着た悪魔
第7章 ☆CHANEL NO7☆
家を出たのは17時15分。
私のバッグには、彼の携帯と私の携帯と……タバコとライターと財布だけしか入っていない。自分でバッグを持てば良いのにそれはイヤらしい。
よく分からない拘りに流されるがまま、まるで嫁の様に男の荷物をバッグに入れ込んだのだ。
「運転手さんをいつも使ってるから免許無いと思ってた」
「男で俺の年齢で免許無いヤツなんて居ねえだろ」
「幾つなの?」
「──お前ってマジでサファイアの事何も知らねえの?」
マイバッハのエクセレロのハンドルを握りながら、又も目だけを動かしてバカにされた様な視線を送られる。
でも──性格の悪い私は自分の携帯でエクセレロの価格を調べていた。
まあ、8000万とか1億と少しくらいだろうな。って思っていた私が大馬鹿だったみたい。携帯に表示されているのは『約8億2000万』という飛びぬけた数字だった。
「………。何だ?いきなり黙り込んで」
「い、いやっ」
乗り込んだ車の値段を調べてた!なんてさすがに『現金な女』の私でも言えっこない。それこそ性格が腐る様な気がする。
でも彼は、何でこんな表情になったのか何となく予想出来たのだろう。
「調べたんだろ、この値段」
「別に」
「ちなみに言っとくが、これも俺は帝国の力を一切借りてないからな」
「なっ──そんなん8億2000万でしょ。アンタの力があれば買えるでしょっ」
「ははっ、やっぱり」
まんまと彼の罠に引っかかる。
しまった、と顔を隠しても時すでに遅し──何とも言えない笑顔を浮かべて、車を地下駐車場から発進させたソン・テヒョンは本物のセレブだった。