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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆

満月がバッチリ見えるバルコニーに干しているのは、テヒョンの好きなシャネルのシャツがほとんどだ。とんだシャネラーだな、なんてひと昔前の言葉を思い出しながら、洗濯物を入れ込む。


煙草片手にこんな作業をするなんて──いくらマナー教室に通っても『ながら作業のガラの悪さ』は変わりっこない。



テレビは早めに消していた。

なぜなら──アイツの"異母兄弟である兄貴”のニュースで持ち切りだったから。

……どうやら、前回は中止になった株主総会が今日開かれて彼の処分が正式に決まったらしい。


そこそこなら韓国語も理解できる様になった私の耳には、あの帝国グループで『まだ月商三億』しか売り上げていない『味剣』の代表になったと聞こえた午後。



テヒョンもあの時言っていた。

『帝国の主な資産は、セメント会社がナンバーワンだ。次に続くのが航空会社と貿易会社。その後に僅差でコスメ部門』

『実質、上位三つは親父の権限が強すぎる。』


『兄貴はローマ・コスメの代表っていう──マジの帝国次期代表の道を歩んでたのになあ。皮肉だと思うよ』


となると、世間一般から見れば潰れる事がない帝国の息がかかった味剣の社長という素晴らしいレッテルになるが、内情を知ってる者からすれば『左遷同然』の処分になったんだと思う。

一番悔しいのは、彼を育ててきた帝国グループの会長……テヒョンのお父さんだろう。



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