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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆
「私からすれば、それも皮肉だけどね」
「きっと仲なんて全然良くない弟が──手を広げたも同然の会社に行かされたワケなんだから。」
男はプライドが高いし、根本的に負けず嫌いだ。もし本当に韓国ドラマの様にドロドロしているのが帝国にも共通して言える事ならば──きっと、彼は思っているはず。
『婚外子のクセに』と。
いくら上り調子になったとは云え、帝国の花形業務を担う会社からは外されて…挙句の果てに憎い弟が利益を持って来たも同然の味剣に……かぁ。何というか、難しい世界だ。
そんな事を考えながらバスタオルをたたみ終わって、バスルームに持っていこうと立ち上がった時、静かに玄関の扉が開いた。
「……おかえり」
「ああ。」
「早いね、まだ21時よ。曲作りって言ってたしもっと遅くなると思ったから先にご飯食べちゃった」
「俺のは?」
「置いてるけど。チンして食べてくれる?」
「分かった。」
当たり前かの様にバッグを渡される。バスタオル持ってる事は目に見えてるハズなんだから、いつもと状況が違う事を察して自分で部屋に持って行ってほしいわ……。
「あ、今日は『筑前煮』だ」
「そう。大阪からラカントSっていう人口甘味料を送って貰ったからさ。普通の砂糖は食べれないけど、これなら食べて良いらしいし」
「ユナに聞いたのか?」
「うん。ちゃんとオッケー貰ったよ」
エレクトーンやらパソコンやら簡易マイクやら、仕事道具と彼自身の趣味であるインテリアがセンス良く輝く彼の部屋に入ると、鼻に香るのはラベンダー。
てっきりシャネルか何かかと思ったけど、今日は違うみたいだ。昨日寝る前にお香でも焚いたのかな?
最初は生活感の欠片もなかったのに…。こう見ると、改めて私が改心してからは彼の生活拠点が当たり前かの様にこっちにある事を再確認する。
「そういえば、データ用紙ユナから貰ってきただろ?」
「うん!」
「それ見せて。」
さすがに帰宅したばっかりの男を動かすのは可哀想だから、ご飯を自身でレンジに入れる彼を横目にお茶は私がいれてあげた。
「コレ」
「………。」
煙草を吸いながら、難しい顔でデータ用紙を見る。
私は開けない様にって言われてたから開けてないけど──。