この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆
一瞬だけ鳴り響いた携帯電話。それが『下に到着した』という彼からの伝言である事には直ぐに気付いた。
バッグを持って家の鍵を閉めてエレベーターに乗り込む。
ティーから教えてもらったメイクは、どうやら私によく似合うらしい。
日本の時とはまた雰囲気が変わるけど優しそうに見えるこのメイクは、髪型とハイブランドで固められた服装と良い意味でのギャップを生み出している。
だから──私も気に入ってるんだ。
「お待たせ」
「……シャネルか」
「シャネルしか持ってないじゃん」
「ヒールはカルティエだな。時計は相変わらずのショパール。まあお前らしいセンスで良いんじゃねえの?」
「何その上から目線」
ブイさんは、私たちのやり取りを聞きなれている。いつもの素敵な笑みでバックミラー超しに二人を見つめていた。
「全然話し変わるけどさ。今回、ヒョンが払ってくれると思う?俺が払うべきだと思う?」
「そりゃ相手が払うでしょ。ヒョンって事は年上なんでしょ」
「ああ。だけど──」
「分かるわよ。俺も自立したって意味も含んでごちそうしてあげたいんでしょ」
「そう。」
「だけどねテヒョン」
「ああ?」
窓を少しだけ開けた。
日本では窓全開でタバコを吸っていたけど、さすがに隣にコイツが居る今は何があるか分からないから気を遣う。
「向こうから見れば、貴方はまだ幼い子供なのよ。付き合いも長いんでしょ」
「……。」
「それなら相手の顔を立てる意味も含めて、ご馳走されるべきよ。」
「アンタの年収なんかランキングで毎年発表されてるんでしょ?どうせ」
「この前はウォール誌のランキングにも乗った」
「でしょ?いくら疎遠と云えどお父さんもそれを見てるハズだし、間接的にそこからアンタが『アーティストのソン・テヒョン』として成功してるのは知ってるのよ」
「だからお金でそれを示す必要はない」
「──私だったら、逆に彼を置いてけぼりにしない様に幼さ含ます意味も込めてシャネルでお揃いのキーホルダーか何かを渡すわよ」
「キーホルダー?そんなモン、大の大人が要るか?」