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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆
静かだけど、とても威圧感のある声。
思わず背筋が延びる。
でも、それはどうやら私だけみたい。彼はウェイターさんに小さく頭を下げると、自らの腕で大きな扉を開いた。
「……テヒョン」
「──っ。ヒョン…。」
私には、言葉に詰まったテヒョンの背中しか見えない。
「元気だったか?昔は、あれだけ小さかったのに今は俺よりも身長が高くなってる。怖いモンだな」
「きっとヒョンも年を取って縮んだんだよ。」
「はは、言ってくれるな。その性格は昔から──やっぱり変わってないみたいで安心したよ。」
「リサ」
突然、自分の名前を呼ばれて驚いた。
「は、はい。」
「紹介するよ。彼は俺がチビの時からずっと世話になってた、会長秘書のイ・ランさんだ。」
「イさん。」
「──リサさん、先ずは謝っておくよ。この度はテヒョンの頼みとはいえ、本当に驚いただろう?──申し訳ないと思ってる。」
「あ、いえ」
真っ黒のスーツに、薄いピンクのネクタイ。まだまだ仕事はこれからだ!というオーラが出ている。
やっぱり今は50代や40代の人の方が私達世代の若い子よりも、ある意味若々しく元気なのかもしれない。
「テヒョンに暴力は振るわれてないかい?」
「あっ──。」
「なんだよ、その沈黙。緊張してんのか、肯定してんのかをハッキリさせてくれねえとお前のマンションもカードも全部元通りにされちゃうじゃねえか」
「──。」
優しそうな笑顔だった。
テヒョンも……。彼がヒョン!と嬉しそうに呼ぶイさんも。
「私、今は今で結構楽しいです。」
「テヒョンも、ワガママだけど暴力は振るいません。大事な所は引いてくれるし、強制連行の一連以外は本当に──よくしてくれてると思います」
「………。」
「おお、そうか。まあ、こいつは昔から不器用なんだよ。その話も──またお酒が進みだしたらしたいな。」
「いつの話だよ」
「お前が12歳の時の、例の100万円事件だよ。」
「っ!ヒョン!!!」
やっぱり、彼から見るとテヒョンはまだ子供なんだろうなあ。
子供のままで止まってる──の方が正しいのかもしれないけど。
結局、彼達は立ったまま15分ほど話続けた。久しぶりの顔を見合っての再開には付き物の展開だ。