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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆
「貴方が帝国グループの会長を親に持ってる事は知ってるわ」
「でもどんだけお金持ちであっても、血を分けた子供は自分の子供なのよ。それを今更、アウトローなんて思うかしら」
「──貴方が」
「テヒョンが、家の金を使って売れもしないのに遊びまわってる様な『カス』だったら話は別だけど、そんなワケじゃない」
「自分の力で売れて、自分のお金で生活してる」
「どんな親であれ、子供がそうやって自立してるのを見て……憎く思う様なマネはさすがにないんじゃない」
「はっ。おめえ、ゲッティ知ってるか?」
「ゲッティ?何それ」
「──石油王だよ。1966年にギネスに『最も裕福な個人』として掲載された事でその名が日本や韓国にも広まったんだ」
「オックスフォード大学を卒業して、親父から離れて自分の石油会社を設立した。」
「その大金持ちはな、かなりの冷酷さを持ち合わせてる事でも知られてる」
「冷酷?」
「脳腫瘍を発症して、盲目になった我が息子に対して多額の金をつぎ込む妻を罵倒した。で、挙句の果てには妻と子供を家から放り出したんだ。」
「息子は12歳で死んだ。──でも葬儀には欠席」
「まだ有る」
「ゲッティの孫がローマで誘拐されたんだ。身代金は300万ドル。……それをどうしたと思う?」
「払わなかったの?」
「まあ、そうとも言えるな。あの人の返答はこうだった。『他にも孫が14人も居るんだ。全員誘拐されて、犯人の言う通りの額を支払っていたら身が持たない』とな」
「エグイわね」
「結局、彼はその身代金を値切って200万ドルにした。それは税金が控除される最高額だったからだ」
「分かるか?事業に長けている物や芸術に長けている物は、本来普通の人間が使う家族への愛やパワーもそっちに使ってしまう」
「血を分けたとか、婚外子の子供だからこそ可愛がってあげないと、とかそんなの綺麗事なんだよ。帝国よりも遥かに資産を持ってたゲッティ一族で、コレなんだ」
「そこを目指そうとしている会長……親父が、俺なんかを今更我が子の様に可愛がるハズなんて無いんだよ」