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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆
「だからヒョン。」
「……。」
「俺は自分を必要としてくれている場所で、生きていきたいと思ってる。こうやってリサを隣に置いておけるのは幸せだ」
「そして、その幸せを作ってくれたのはヒョンだとも思ってる」
「でも──さすがに前から言ってる様に、その話には今更乗れないんだ」
ほら、やっぱり。
やっぱり──ずっと話してたんだ。何だかそんな気がしてた。確信に変わりかけたのは、ソウルグループ会長と支店長と私と彼、四人で居た時に──電話から聞こえた会話。
「……。必要としてくれてる、か」
「ああ。帝国には俺が居なくても他のヤツが居る。でもサファイアにはソン・テヒョンは俺しかいない」
「勿論、愛してくれているファンの人にとっても俺は一人だし、ずっと携わってくれてるマネヒョンやメイクさんにとっても俺は一人だ」
「お前に代わりでもいれば良かったのかもしれないな」
「そうだな。そうなれば──俺も帝国に戻る決意が出来たかもしれない」
口には出せなかった。
でも思う事がある。
果たして、イさんは会長に黙ってこの食事に来ているのだろうか?もっと言うと私の為に色々と手を回した事──会長は本当に何も知らないんだろうか?
もう何十年もの付き合いになるだろう、イさんと帝国の会長は。
きっと、テヒョン以上に会長の気持ちを理解して、組んであげようとしているに違いない。
会長自身も──そうやって、苦楽を共にしてきた秘書が何か可笑しな行動でもすれば異変に気付くだろう。優秀な経営者は人の変化に敏感な事で知られている。
私にはイさんが、この話を持ち出した裏側には──会長の意思もあるんじゃないか。そう思えたんだ。