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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆
私がデザートを食べ終わるのを待っていた様だった。
我儘ボンは、シャネルの紙袋からネクタイ二枚とスカーフ一枚を取りだした。
「このネクタイ、ヒョンにプレゼント」
「ははっ、シャネルばっかり着てるらしいもんな。可愛いじゃないか」
白地に、ワインレッドで小さくシャネル特有のお花のマークが幾つもプリントされている。裏側は赤と白のストライプになっていた。
私に──手渡されたスカーフも全く同じ柄だ。
「これ、私に?」
『そう、三人でお揃いにしました』
たどたどしい日本語、そして憎めない笑顔。
自然に頬が緩む。
「……ありがとう」
凄く素敵なスカーフだ。これだと今からの季節に合わせても大丈夫。バッグの持ち手部分に飾りとして付けても、生えそうな感じ。
「三人でお揃いか」
「そう。今日という日が素晴らしい日になったという事を示す、目に見える『証拠』」
「ありがとう、テヒョン」
「ヒョン。こちらこそ──こんな我儘な俺の言う事、ワケも聞かずに聞いてくれてありがとう。……親父の事、これからも頼むよ」
「──ああ。」
照れくさくなったのであろう彼は、私のバッグから勝手にタバコを取りだすと意地の悪い笑みをイさんに見せて部屋を出て行った。