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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆


「えええ!ちょっと待って!」

ネットで調べた事がある。アジアのラテン系と言われる韓国人は愛情表現が豊からしい。だから日本みたいに『嫉妬は恥ずかしい』とかそういう文化は無い。

女の子は自分の彼氏が他の子と仲良さそうに話してたら、あからさまにイヤそうな顔をして彼氏に文句を言ってる。

男もそうだ。恥ずかし気もなく『嫉妬した』と気持ちを伝える。


だからこそ──ヒョナには私の焦りが理解できるんだと思う。

彼女は、私が手にもつワイングラスを強引に取り、机の上に置くと、今度はその手で両肩を押した。とりあえず座れ、という合図。

「どういう事?彼氏が来てたの?」

「来てた訳じゃないけど」

めちゃくちゃなウソだと思う。


「何で?怒ってるの?」

「いや──連絡は来てない。でも私が踊り狂ってたのは確実に見てる。共通の知人から、そんな話を聞いた」


「何それ、いつ分かったのよ?」

「今さっき──かな。」


「ヌナ、彼氏って──。」

言いかけるルイ君の目を睨んだ。彼は、いつものお茶らけた顔ではなくて真顔。きっと探られたくない私の気持ちを理解したのだ。

「でも、リサの彼氏は優しいじゃない。」

「優しいのかすらも分からないわ」


「何?本当。今度は疑心暗鬼みたいになっちゃって……。確かに喧嘩にはなるだろうけど、暴力振るわれたりとかそういうのは無いんでしょ?」

「それは無いと思う」


「でしょ?──私、思うもん。こうやってわざわざ百合大学への留学を手配してくれて、その費用も払ってくれてさ。」

「カンナム百貨店のオリジナルラインの服も高いのよ?それを当たり前かの様に買い与えてる。世界最高ブランドである『CHANEL』の香水も洋服も帽子も……」


ああ、ヒョナ。

それ以上は────。


「そんな彼氏ドコに居るの?普通はユニクロ着させて、大学に通学させるわ」

「でも貴方の彼氏は貴方の事を綺麗にしようとしてる。だからこそ『負けるなよ。通学も気合い入れろよ』って言ったんでしょ」


「だからこその……シャネルなんでしょ」



「そんな人だもん。そりゃ男性だから嫉妬心は有るだろうけど、きっと話し合ったら解決できるわ。リサはあくまでも他の男性とセックスしたワケじゃないんだしね」

「────。」

一人で、ただ黙り込んでいるルイくん。

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