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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆
ルイくんの到着は早かった。さすがにクラブだからか、マスクはしていない。伊達メガネは付けてたけど……。
席に着くなり私とヒョナにハイタッチをしてタバコに火を付けた。
日本で買った物かな?赤マルのパッケージには、私の大好きな国である日本の公用語が書かれてある。
「はあ。疲れた!やっぱり仕事終わりのクラブは最高だわ」
「お疲れ様。個人撮影?」
「そうなんだよね。サファイアのメンバーにリサヌナのダンスの感想聞きたかったんだけど誰とも会えなかった」
「そ、そっか……。」
つまりテヒョンの事は見ていないんだろう。それを彼は遠回しに伝えてくれている。
ヒョナに隠し事をするのは──少し胸が痛んだ。信じてない訳じゃないし、私は彼女の事が大好きだ。
……でもこれは私だけの問題じゃない。
私と彼の問題になる。しかも今の今まで、そんな話をしていたんだから尚更、突然真実を話すなんて……そんなの絶対ムリだし、信じてもらえないだろう。
「でもティーに会ったよ」
「嘘?!ティーに?!」
「ティーって誰?」
「テヒョンさんの専属メイクさん。リサヌナも、仕事で何度か絡んでるから知ってるんだよ」
「へえ……。」
「彼女が言ってたんだ。」
『今日のテヒョンさんは犬に何かあったの?と思う程、落ち着きがないと思えば──いきなり、獣医に文句を言いに行く!みたいな不機嫌そうな顔をして、友達と飲みに行ったの。』
「──って」
ティーらしい例えだった。可愛いけど分かりやすい。確か、前も犬に例えてた気がする。
「──はあ。」
今度は私が溜め息をつく番。でもルイくんみたいに仕事に疲れたからじゃなくて、テヒョンの事を考えただけで、どうにかなってしまいそうだったからだ。
歌詞を借りるなら
私は有毒でもない。今になると、テヒョンも私にとって有毒ではない。
一番の毒は──、オル大の相手漁りの定番であるこの催しと、私のダンスだ。