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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆
「この躍りは、見てもらってこそ輝く躍りなのよ。」

ハイヒール独特の音が響く。私はそんなの一切気にしない。

一階のフロアへと続く階段のど真ん中をゆっくりと下った。まるで……この歌の色気に吸い込まれる様にして。


日本に居た時は、そんなにクラブに行かなかった。行くとしても、大阪に帰った時に同級生達といつもの場所へ行くくらい。

私の友達も皆変わってる。男に集ってタダ酒を飲むのを凄く嫌う私達は皆で割り勘をしてVIPルームを取っていた。

凄く懐かしい。

宗右衛門町にある、VALIというクラブだ。隣には大きなキャバクラが有り、関西地方では一番の規模を誇るだろう。

箱が大きいため、私達がリザーブする席は決まってフロアと同じ階にあった。

それが韓国に来て一転。

トイレに行くのも、こうやってフロアに躍りに行くのも階段を下って目の前のカーテンを開けなきゃダメなんだ。

何だか変な感覚。


あと三段でカーテンまで手が届きそう──。そんな時、誰かが向こう側から『境界線』の扉を開いてくれた。


暗くて顔は見えない。

軽く頭を下げて、その男の人を通り過ぎようとした時。私がBNの事務所で覚えたのと同じ『デジャブ』を感じた。

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