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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆
──あの目。

──あのニヤついた顔。



一度は離れたハズの彼と私が同時に振り向く。

「………。」


「オメエ……。」



「──うそでしょ。」

あの時に会ったアート財閥の長男が、下から調達してきたであろうテキーラを持って、そこに居た。

「……元気だったか?日本人。」

「──。」

反省していなさそうな素振り。私が日本人と呼ばれてイラっとしたことを彼は知ってる筈なのに。


「立ち話も何だな。席にあがるか?」

下品な誘い文句も、アメリカ鈍りの英語も何も変わっていない。

「私、貴方と話す事なんて無いから」


「へえ。オメエは俺がBNに送った秘書が書いた謝罪状で満足してくれるんだな。」

「俺達韓国人は、金を貰っても慰安婦問題について何1000年と恨む気満々なのにな。皮肉なもんだ。」


「知らないでしょ。今度こそ……こんな場所で政治の話するつもり?」

曲はまだ流れている。

ああ、ここからなのに。ここから──あのお尻ダンスのメインが始まる。


手を上げて、カーテンを捲ろうとした時、後ろから髪の毛を捕まれた。

「……っ、何すんのよ!」

振りほどこうと暴れた為、彼が持っていたテキーラ5つが私の服にかかる。

今ライターを近付けられたら私は燃え上がってしまうかもしれない。

まあ、こいつはイスラム国じゃないからそこまでの無茶はしないだろうけど。

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