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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆


「ちょっ、ちょっと!」

お酒を飲んで絶好調で踊っていたハズのお客さんたちが、もの凄い顔をして私と彼を見つめる。誰も……助けてはくれなかった。

私が日本人だから?それとも、コイツが江南で名の知れた『アート財閥の長男』だから?

ボディーガードの人が韓国語で何やら話していたけど、上手に言い逃れをしたのだろう。私の顔を見るなり、見物客の整理をし出した。

せっかく貰ったカンナム百貨店の服も、これでオジャンだ。韓国のクラブは汚い。

痰とか唾とか当たり前。そんな所を引きずられているんだし──。クリーニングに出して全部綺麗に出来たら良いけど可能性は希薄だ。

「ねえ!聞いてるの!」

無情に鳴り響くだけの音楽は、私の気持ちも代弁してくれない。曲が止まれば叫んで二階のヒョナとルイ君に助けを求める事が出来るだろう。

でも──此処はクラブ。


曲が止まる事はなかった。

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