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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆
ゆっくりと私に近付いてきた彼は、周りの人が騒ぎ立てるのを無視して静かに──口調とは裏腹な優しさを持ちながら、頬の傷を撫でる。
「お前の事を理解した上で、この韓国で手綱引けるのも」
「お前のした事のケツを拭けるのも」
「俺だけなんだよ」
「なあ、答えろよ。何で俺が居ない場所で危険な真似をした?」
「危険とは分からなかった……。」
彼の言いたい事は分かる。『お前はバカか?』とかきっとそんな一文だ。
でも言われてもしょうがない。一人きりで生きていく・一人きりで解決できると思っても結局、テヒョンしか頼る相手の居ない私は彼に電話をしたのだから。
『僕は確かに頼ってこいとは言いました』
『リサの事を大事にも思ってる』
『リサからすれば今の僕はスーパーマンだ。』
『でも』
「おめえに此処までしたコイツを放っておけるほど、紳士じゃねえんだよ」
最後は──英語だった。
『いいですか、全主導権は僕にある』
『これで僕がノーマスク・ノーサングラスでリサの頬を触ってる事に対して、君は文句を言えない』
「ねえテヒョン」
『────。』
「文句を言う気なんてないの。ただウソ付いたことも、こうやって意地張って離れたクセに結局、こんな事に巻き込んでしまった事も」
「全て申し訳ないと思ってる。……心の底から。」
「だから、言わせて」
「本当にごめんなさい」
「そして──有難う。……強がってるけど、本当は怖かった。ウンサンにも、貴方にウソをついて、貴方を怒らせた事も──」
「だから帰れなかった」
「でも──帰れば良かった。貴方の元に──」
言い終わったと同時に彼の顔を見る。
彼は……笑ってもいなければ、怒った表情も、逆に嬉しそうな表情もしていない。
ただただ、黙って私の事を抱きしめた。