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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆

「本当、テヒョンさんはリサヌナに優しいですね」

「何言ってるんだよ。俺は過去の彼女にも優しかったし基本的に女性には紳士に接してるんだよ」


「まあ──優しいのは優しいですけど。何かブラジルのあの子の事を思っても、取って付けたみたいなやさしさだっただでしょ?」

「でも今のヒョンは素で優しい──というか丸くなった気がする」


「そりゃ、初っ端に言った通り──そこまでして俺はコイツを手に入れたんだ。今更、見え透いた優しさとか出しても意味ねえだろ。」

「まあ。あの帝国……の力を使ったくらいだもん」


到着して、まずジン君が持ってきてくれたモエシャンを開けた。私がシャンパンなら『モエが好き』っていうのをテヒョンから聞いていたらしい。

値段じゃなくて──気持ち、だと思った。


「でもびっくりしましたよ。イキナリ、真面目な顔して『俺、帝国グループの次男なんだ』って言いだすから。」

「本当に!新しいドラマの事でも話してんのかな?って思ったよ」


「だな。……誰も、コイツが帝国の、あの会長の血を引く息子だとは思わない」


「でも婚外子だぜ。」


「関係ないだろ。それでも息子は息子だ」


「で、優雅にシャンパンなんか飲みながら『俺は、今まで疎遠だったクセして自分の力だけでどうにも成らないからリサを手に入れるために帝国の力を使った』の暴露だもん」

「ヒョンに引いた──というよりビビッたよね。仕事辞めさせたのも、カードの凍結も、家の勝手な解約も──。普通なら有り得ないし、そこまでしない」


「まあ俺は、百合大学のパーティーで会った時……何となくテヒョンさんの顔が浮かんだけどね。確証なんて無かったけど野生の勘かもしれない」


「それで──」

「そんな無茶して──」


「結果的にリサの心を手に入れて、今ではお金の契約も期限の契約も何も存在しない『普通のカップル』になってるんだから、ソン・テヒョン。俺はお前を凄いと思う」


真面目なトーンでそう言ったジンくん。

ワインを机の上に置きながら、確かにそうだな。と思った。

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