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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
「イさん。」
「……何て?」
「兄貴、味剣の社長を降りたらしい」
「はあ?本当この前就任したばかりでしょ。何でまたこのタイミングで?」
「さあ?耐えられなかったんじゃねえの?一族からも世間からも『下手打って左遷された』レッテル貼られてた訳だし。仕事しにくかったんだろ」
「何それ、這い上がってもう一度、帝国のトップに立てば良いだけじゃん」
「それが出来ないのが、戸籍上の子供だよ。出来るのが婚外子だ。」
「そこに戸籍って関係有るの?」
「有る。」
ひょいっと軽く起き上がり、水を飲んでからテレビを付ける彼。私の顔は見なかった。
「戸籍上に記載されてる子供は、やっぱり可愛い可愛いされるんだよ。」
「甘やかされるから努力が出来ないし落ちた事もないから、這い上がり方が分からない。アートの長男なんか典型的なパターンだ」
「でも俺みたいな婚外子は──」
「幼い時から、表に出過ぎない事を意識させられる。」
「そして、愛した母親が愛人ってレッテルで色々な一族から下品な目で見られる事に耐え抜かなきゃダメ。」
「その違いだよ。だから俺はサファイアが売れないって言われ続けても努力出来た。」
「出来たから、今が有る。」