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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
「ここからだ、親父の逆襲は」
彼は──きっと、本当は会長の事が好きなんだと思う。
生き生きした顔をしているし、決して今聞いた限りでは会長の事もお母さんの事も悪く言っていない。
「おじいちゃんが死ぬ前に、自分の信頼してた秘書に渡した資料には上野芝財閥のメインカンパニーの脱税の証拠が入ってた。」
「それを──自分の息子が自力で何かをし出した時にメディアにリークする様に言ってたらしい」
「遺言って事」
「そう、それが本当の遺言」
「どうして?結婚したなら上野芝財閥と帝国財閥は仲間同士じゃない。そんな一気にヒビが入る様な事リークして何になるの?」
「──ヒビを入れたかったんだよ」
「男尊女卑の考えが今よりも強かったあの時代の韓国で、たった数十億円しか変わらない資産を持つ家族に偉そうな態度されてたんだぞ」
「親父の嫁の父親なんか──、知り合いに『アイツにはズル賢く動ける器量なんてない』と言いながら親父に上野芝の株を20%も配当したんだ」
「それは『賭け』だったらしい。」
「動く筈がないと読んだからこそ、配当した訳?それって凄い嫌味な行動じゃん。」
「きっとその場では『動き出す素振りをしたらお前達に1000万ずつやるよ』なんて下品な事言ってたんでしょ」
「そういう事」
何か有れば配当した分も又取り返せると踏んでたんだろう。それだけ現会長さんは馬鹿にされてた。
「だけど──親父はアホじゃねえからな。」
「おじいちゃんの遺言を聞いた時に、周りに探りを入れた。そして、全てのカラクリに気が付いた。」
「だからこそ危機感を覚えてフランスという、上野芝の手もまだ掛かっていない未知の世界に足を踏み入れたんだと思う」
「凄いギャンブラーよね。」
「ああ、凄いよ。あの人は──経営に関しても、何くそ根性に関してもピカイチなんだよ」