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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
「なんかさ」
「ん?」
「財閥って思った以上にドロドロしてるのね。政略結婚『させた家』が、大元を乗っ取った訳だもん。」
「そうだな」
「俺、思うんだ。おじいちゃんは親父とオンマの関係を知ってたんじゃねえのかって」
「何でそう思うの?」
「『自力で何かをした時』って言うのが引っかからねえか?」
「まあ、それはそうだけどさ。」
「おじいちゃんの見てた親父は所詮、二番手だったんだよ。だけど──ドコかであの人が動き出す根拠を持ってたから、わざわざ秘書にそんな事を頼んだ」
「でも”嫁”が動かす筈はない。ってなると──何よりも愛していたオンマの言葉なワケだろ。俺はきっとおじいちゃんは薄々気付いてたと思う」
「……。」
「大人だから言わなかったんだろうな。」
「でも大人だからこそ、愛で動かさない様に……理性と損得で動く様に……あんな急に上野芝と政略結婚させた」
「俺、親父と一緒に住んだ事が無いんだよ。上野芝の力が健在の時は嫁が強かったから毎日向こうに帰ってた」
「逆に帝国の天下になったと思えば、次は忙しすぎて俺にもオンマにも会えなくなった。」
「13歳の時だな、その一年後。俺のオンマが結婚を申し出たみたいだけど親父は断った。理由は『帝国は大きくなりすぎた』の一言だけだったらしい。どういう意味か分かるか?」
「──そのままの意味じゃなくて?」
「違う。いくら韓国の血が半分入ってると言えど日本国籍を持つお前と結婚する事はここまで帝国グループが大きくなった今、リスキー過ぎるって事さ。」
……テヒョンのお母さん、そうオンマは何て不幸な人だったんだろう。こんな事を言ったら怒られるかもしれないけど、そう思った。
きっと彼の成長を見守りながら……祈りながら……会えなくても一人での子育てが大変でも異国の地、韓国で沢山の障害を乗り越えてきたんだ。
それはお金の面じゃなかったかもしれない。
精神面や、彼が言ってた『愛人』というレッテル、そして『日本国籍所有者』という国籍の問題。
乗り越えられたのは──会長との結婚。という目的が有ったからだろう。
女は幾つになっても夢を見る。そして、女は『好き』だからこそ『愛人』で我慢できるなんて器用な事は出来ない。