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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
「で、その話が出てから半年後、オンマは乳がんで死んだ。」
「癌だったの?」
「ああ。らしい。」
「俺も親父も誰も知らなかった」
「じゃあ結婚っていうのは──」
「死ぬ前の最後の願いだろうな。愛した男の嫁として死にたかったんだと思う。」
「オンマが死んだ次の日は俺の誕生日、10月10日だった。俺は14歳になったと同時に母親を失い──兄貴も暮らす『帝国の本家』に住む事になった」
「それが会長……いや、親父が考えた『オンマがあの人に望む事』だったんじゃねえのかなって今なら思えるよ」
「それを親父は組んだ。だからこそ、あんな気の強い嫁を言い聞かせて俺を我が子として正式に迎え入れようとしたんだ」
「じゃあ、そこで親子の会話とかそういうのは生まれたの?」
「これが俺の持ってない所でな」
「俺が家に着いたと同時に、ラスベガスで同時多発テロが起こったんだ。」
「世界で五つ星ホテルを沢山経営してるRXグループを買収したばかりだった親父は、その関係も有ってその後直ぐに自家ジェットでラスベガスに飛んだよ」
「じゃあ、会ってないんだ」
「ああ。オンマの葬式の時に久しぶりに顔を見て──そのまま、だ。」
「だけどな俺はイさんや親父の弟には良くしてもらってた。それこそ、そんな家居心地悪いだろ?14歳なんだから、俺と兄貴が血繋がってない事は理解してたし」
「それに──嫁の態度が気に食わなかった。」
「……。」
「だから、俺はイさんの家に一週間ずっと居たんだ。あの人は奥さんが病気で子供が出来ないから……おれの事を本当に可愛がってくれてた。」
「勿論、俺のオンマの事もずっと心配してくれてたし、何か有れば一目散に飛んできて色々と助けてくれてた」
「で、イさんの家でテレビを見てた時に──見つけたんだよ」
「何を?」
「BNのオーディション予告を。」